図14 ローラ上で測定した結果をClark式で補正したタイヤ転がり抵抗と
    フラット面で測定されたタイヤころがり抵抗との相関性
 実験結果を図14に示します。このグラフは、ローラシャシダイナモによるタイヤ転がり抵抗(曲率補正後)とフラットシャシダイナモによるタイヤ転がり抵抗の両者の相関性を示すものです。図の結果から、どのタイヤ種でもClark式による曲率影響補正結果がフラット面での計測値に近くなることがわかりました。すなわち、Clark式を用いた曲率影響の補正方法は、ローラシャシダイナモで平坦路走行時の転がり抵抗を算出する上で有効な方法となりうることが確認できました。
図13 タイヤ接地面の曲率影響を補正するためのClark式
9.3 ローラ上タイヤ転がり抵抗の補正方法とその有効性確認
図12 フラット面上とローラ面上でのタイヤ部分の転がり抵抗測定値の比較
9.2 フラット面とローラ面におけるタイヤ転がり抵抗差の測定結果
 図11の上の図に示したのは、FFタイプのMT車の非駆動輪(後輪)をフラットベルト型シャシダイナモメータ並びにローラ型シャシダイナモメータ上にそれぞれ設置し、その際に前輪はエアベアリング上に載せることで、摩擦のほとんどない状態で前後に車体がフリーに動ける状態を作り出しました。その上でシャシダイナモメータ側から駆動することでタイヤを一定速度で回します。その際に車体の前に取り付けたロードセルは、タイヤを含む車両全体の転がり抵抗を示すものになります。一方、後輪タイヤのホィール部分に取り付けたホィールトルクメータは、後輪タイヤよりも上流側(トランスミッション側)の車両内部動力伝達系の回転抵抗の値を示しています。車両ロードセルの値からホィールトルクメータの値を差し引くことで、後輪側のタイヤ部分の転がり抵抗が求められます。このような方法でフラット面上とローラ面上でのそれぞれのタイヤのみの回転抵抗を測定することで、フラット面とローラ面でのタイヤ抵抗の違いを求めました。
 タイヤ設置面の曲率影響の補正方法として、JASO E015(シャシダイナモメータを用いた派生車両の走行抵抗算出方法2016年3月制定)では、海外文献を参考にして下の図13中に示すClark式を適用することにしました。そこで今回行った実験結果に同式に基づく補正法を適用することで、ローラシャシダイナモメータ上で測定し曲率補正されたタイヤ抵抗の値が、実際のフラット面上で測定したタイヤ抵抗の値にどの程度一致するかを実験結果から確かめることにしました。



 
図11 フラット面走行時とローラ上走行時のタイヤ転がり抵抗差等を調べる目的で使用した実験設備と実験方法
 前ページで示したように、タイヤと接触する面の曲率の有無によってタイヤ接地部位とその周辺部材の変形状態が変わってきます。ローラ上のタイヤの接地面積は曲率のない路面(フラット面)に比べて小さくなるので、その分だけタイヤ接地面近傍に変形圧力がより集中することになります。こうしたタイヤ設置部位の変形状態の違いによって、路上での走行とローラ上での走行でタイヤの回転抵抗に違いが生じます。タイヤ接地部周辺は、回転周期によってゴム部材が圧縮変形と接地面が離れた後の復元が繰り返し生じます。こうした回転に伴って発生するタイヤの転がり抵抗は、このようなヒステリシス損失が主な原因で生じるので、タイヤ1回転当たりのタイヤ損失つまり転がり抵抗は、路面よりもローラ上で回転する方が大きくなると予想されます。タイヤで生じた損失は熱に変わりタイヤ内部に蓄積されますが、この蓄熱と路面やローラ面及び周辺大気への放熱が量的にバランスするところまでタイヤ温度が上昇していきます。
 ローラ上で試験車の転がり抵抗を測定する際には、このようなローラ上で特異的に生じる抵抗増加分を補正してフラット路面での転がり抵抗値に換算する必要があります。これを正しく行わないとシャシダイナモメータを使った転がり抵抗測定は実路よりも高い値、すなわち不正確なものになります。
 そこで自動車技術会シャシダイナモ試験法分科会では、参加メンバー(試験機関、シャシダイナモメーカー、自動車メーカー等からの参加者)が協力して実験・解析を行いました。まずフラットベルトシャシダイナモメータとローラ型シャシダイナモメータの両方を使って、それぞれでのタイヤ転がり抵抗を調べました。またローラ径、タイヤ径、タイヤ種を変えた場合のタイヤ抵抗差との関係性を調べる実験も併せて行いました。この目的のために、ローラ径がシャシダイナモメータよりかなり大きいタイヤ単体試験機を使用した実験も実施しました。
 実験の方法及び実験装置を図11に示します。
 
9.タイヤが接するローラ面とフラットの曲率違いが各種タイヤの転がり抵抗差に与える影響の解析

 図11の方法で行ったフラット面とローラ面上の各種タイヤの転がり抵抗比の測定結果を、図12の棒グラフで示します。この結果、フラット面でのタイヤ抵抗はローラ上の抵抗値の約80%程度と小さくなることがわかりました。つまりローラタイプのシャシダイナモ上で試験車の転がり抵抗を測定すると、フラットな実コース路面の時よりもタイヤ抵抗違いの分だけ高くなることになります。 そこでローラ型シャシダイナモメータで転がり抵抗を測定する場合には、両者の差を補正する方法が不可欠となります。


 

 


9.1.実験の方法

公益財団法人日本自動車輸送技術協会は、自動車の安全確保、環境保全に役立つ各種の試験、調査、研究を行うことで社会に貢献しています。

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   4WDシャシダイナモメータを用いた台上での試験車転がり抵抗測定方法ー4
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